なまけるりょうせいるい

ドイツと銃とバイクとドイツ刑法とアメリカについて語るウーパールーパー

キラキラドイツ留学ブログです、嘘です。好きなことだけ書きます。

適切なタイミングにやたら革新的な銃を作るドイツ(プロイセン)

近代における銃の発展の歴史上、やはり二つの双璧をなすのが銃大国アメリカとライバルのソ連とロシアである。だが意外にも、適切なタイミングで革新的で外れがないコンセプトの銃を生み出すのはドイツなのである。

 

そして、アメリカの銃の歴史があまりにも有名なサミュエル・コルト*1とジョン・ブローニング*2に、ロシア、ソビエトのそれがカラシニコフ*3に負っていることを考えると、ドイツの銃の歴史は特定の人物で語るにはあまり人物が前面に出てこない。もちろんヒューゴ・シュマイザーや、ドライゼの名は知られてはいるが、彼らが人物単体で取り上げられることはない。しかし、ドイツはいかなる時も傑作銃を生み出すのである。

 

ドイツ(プロイセン)が歴史上最初に銃の歴史に食い込んだのはやはり1830年代に開発されたドライゼ銃*4であろう。

ドライゼ銃は、世界初のボルトアクションライフル*5銃口から弾丸を装填する前装式ではなく、後ろから装填できる後装式のライフルで、薬莢は紙製である。

そもそもライフルとは、銃身の内側が螺旋状に切り欠いてあって、それに沿って弾丸が発射されることで、弾丸に横回転が加わり、非常に弾道が安定して命中精度がよくなる機構を備えた銃*6のこと。これが施されていないと弾丸はただ火薬でぶっ飛ばしてるだけで、本当に命中精度が悪い。*7

ただライフルは銃身に弾丸を沿わせるために、弾丸の大きさは口径に対して大きめに作ってあるため、前装式だと弾丸の装填に時間と力が必要になる。そのため前装式ライフルはあまり使われなかった。かといって後装式は発射時の火薬のガス漏れで射手がけがをする問題を解決できず、これも長らく使われなかった。それを他国に先駆けて*8解決したライフルを1830年代に開発したのがプロイセンのドライゼ銃だった。この銃は普墺戦争で大活躍した...はず...といわれているのだが、いやというより大活躍したって書いてある文献はたくさんあるのに実はあまり詳細な描写が出てこないが、立って弾丸を装填する必要のある前装式の銃を使うオーストリア兵を伏せて狙いまくって大活躍した(はず)。

 

そして時は飛び第一次世界大戦、浸透戦術*9で歩兵用の1人で携行可能な火力の高い銃*10を開発する必要に迫られたドイツ軍は、世界初の機関短銃(つまりサブマシンガン)MP18*11を開発する。このころのライフル用のライフル弾は威力と射程が大きい*12代わりに、反動がでかすぎて連射に向くものではなかった。そのため、威力も小さいが反動も小さめな拳銃弾を使用する連射可能で携行可能な銃を開発してみたところ、大当たりした。残念ながら銃ごときで戦局は変えられず、ドイツはWWIに敗戦するが、これ以降ドイツやソ連はWWIIでも同じようなコンセプトのサブマシンガン*13を使用して戦争に臨むことになった。日本?当然弾丸を生産するのには生産力が足りなかったよ

 

とはいっても、サブマシンガンには致命的な欠点がある。射程が短いことだ。というわけで、独ソ戦で市街地戦ではサブマシンガンで戦っていた歩兵も、市街地を離れて見通しのきく平原になるとボルトアクションライフルで戦っていたらしい。平原でもないのに生産力が足らずにボルトアクションライフルで戦っていた日本君*14

そこでやたら優秀なドイツは、そもそもボルトアクションが持つ1000m以上の射程能力はあまり実戦では生かされないことに気づく。もっと早く気づけよ。ということで、従来の威力も反動も大きすぎたライフル弾のサイズを小さく*15し、連射しても制御可能な個人用小火器、Stg44を開発する。StgはSturmgewehrの略で、Sturmは突撃、Gewehrはライフルを意味するので、44年式突撃銃という意味になる。こいつも革新的で、大成功してのちのAK-47などに大きな影響を与えるのだが、やはり銃ごときで戦局は変えられず、ドイツは第二次世界大戦で敗戦する。

 

敗戦はしたものの、戦後ドイツのH&K社はG3というライフルが各国の軍向けに大成功したり、特殊部隊といえばサブマシンガンMP5といわれるほどに銃の歴史にドイツは欠かせない役割を果たしている。

 

一つの銃の新たなカテゴリーを何個も作ることは、他の国ではなしえていない偉業だし、いかに銃の発展にドイツの影響が大きかったか、というのは容易に理解できます。まあそして優秀な銃ごときで戦争は勝てなかったね生産力が大事だねというお話でもありました。

*1:リボルバーの発明者

*2:M1911、M2重機関銃などなど、手掛けた銃の傑作度合いとその数の豊富さでは群を抜いている

*3:あまりにも有名なAK47カラシニコフ銃の開発者

*4:日本史でツンナール銃って言われてるやつらしいけど、幕末よく知らないので知ってる人いたら教えてください、ドイツ語のZündnadelgewehr(ツントナーデルゲヴェーア)からきてるはず

*5:戦時中の日本兵が使ってる木製のやつもそれ

*6:ただ現在は戦車の滑空砲とかじゃない限りはどの銃と砲も大抵ライフリングされてある

*7:よく戦国時代とかで言われる相手の白目だかが見えたら撃てというのはこのような命中精度の悪さのせい

*8:1860年代のアメリカの南北戦争でさえミニエー銃という"当時では革新的な"前装式ライフルを使っていたので、めちゃくちゃオーバースペック

*9:簡単に言うと、戦力を闇雲にぶつけるんじゃなく、敵の守りが薄いところから重点的に敵の後方に浸透していって撹乱しましょうねっていう戦術、ブルシーロフ攻勢とかカイザーシュラハトとかでググって

*10:このころの機関銃は数十kgあるのでもって走るとか無理、ロシアがフェドロフM1916とかいうとんでもないオーバースペックな自動小銃開発してるが、歴史の闇に消えた

*11:ドイツのサブマシンガンにはMPってついてるけど、MPはドイツ語でMaschinenPistole(マシーネンピストーレ)、文字通り機関拳銃の略、ちなみにGew98やG36のGewやGはライフルを意味するGewehrの略

*12:当時威力が弱い弱い言われた日本の三八式歩兵銃用の弾丸は、今威力が強いといわれるAK47よりエネルギー、つまり威力が余裕で大きい

*13:ドイツはMP40、ソ連はPPSh-41

*14:日本を擁護すると、ボルトアクションそのものは各国で一応現役で、それが歩兵の主力装備だったことはそれ自体は致命的ではなかった

*15:威力が弱いが扱いやすい日本の三八式歩兵銃はその点時代の最先端だった、50年単位で最先端だったので理解されなかったが