日本の刑事政策が遅れているか?という話
https://www.nippon.com/ja/in-depth/a06801/
結論:これを読め
…というのは冗談で、この記事と同じく日本の司法制度や刑事政策が「遅れている」というより「特殊だが(なぜか)成功している」というのが日本の刑事政策の評価になるのだろう。
というより何かが遅れているというのは非常に判定しにくく、往々にして不毛で意味がなく、定量的でもないのであまりさしたる理由もなく「遅れている」「進んでいる」と口にして法制度を評価する人は信用してはいけない気がする。*1
話を戻すと、手っ取り早く統計的に治安を比較可能である殺人発生率を例にとると、2018年度の殺人発生率は10万人あたり0.26ととんでもなく低い(ドイツは0.95、アメリカはなんと4.96、シンガポールが0.16)。
暗数について考えたとしても、さすがにアメリカやドイツを越すとは考えにくいし、欧米のどの国よりも日本が治安が良いことは実際に歩いてみればわかる。*2
……が、大学の刑事政策の講義を開講していた教授曰く、実はあまりなぜ日本の刑事政策がうまくいってるかは学者でもよくわかっていないらしい。
そしておそらくそれが意味するところは、初めのリンク先の記事にあるように定量的な理由がない、あるいは欧米諸国に応用可能な政策少ないということだろう。
個人的には
1.日本社会の血縁関係の強さ(親族に迷惑がかかる)
2.恥の文化
3.犯罪を犯した結果失うものが非常に大きいこと(再犯が多い、薬物中毒者は少ないが、その治療は整っていないことが逆説的にそれを示しているのではないかと推察される)*3
4.他殺より自殺、自決に向かうこと
5.移民が少なく、大多数の国民が上記のような同質的な文化を共有していること
6.日本の警察が優秀なこと
が日本の治安の良さや刑事政策の成功につながっているのではないかと考えているが、定量的に比較できるものが何一つない。
1と3と言った理由は果たしてそれはそのまま日本社会の負の部分になりうるし、5も今後どうなるかわからない。
問題としては、
1.被疑者への長期の取り調べ、拘束
2.検察が有罪無罪を判断して起訴すること(有罪率が上がるというのはこういうことであり、問題というより独自性)
3.被疑者の段階からプライバシーがなく(名前や写真が公表されるなど)、被疑者の親族までメディアにさらされること
が2は迅速な犯人の釈放、更生に繋がっている面もあるし、1、3は法を犯すことへの協力な抑止力になるだろう。
ただ今後、外国人の増加(ちなみに筆者は移民賛成派)、日本人の意識や人権意識の変化などで上記の前提は崩れる可能性があり、日本の刑事政策の成功は意外と危ういものなのではないかなというのが結論である。