なまけるりょうせいるい

ドイツと銃とバイクとドイツ刑法とアメリカについて語るウーパールーパー

キラキラドイツ留学ブログです、嘘です。好きなことだけ書きます。

ドイツ軍のおなまえ

ドイツ軍、名前がそれぞれの体制で明確に違うので、ドイツ語で言うと一発で区別できるのである。と同時に、それこそが近現代でドイツが経験した歴史の複雑性(というか国の政体がめちゃくちゃ変わる状況)を表す。

1.基礎知識

まず基礎知識として、ドイツ語で軍を表す単語については
Heer:陸軍*1

Marine:海軍

Luftstreitkräfte:空軍、航空戦力

Armee:陸軍、軍(英語で言うところのarmyに近い、日常会話で軍について言及するならこれ)

などがある.........他国の軍やドイツの軍隊の個別の軍について(現在)言及するときは。

 

2.ドイツ帝国(~1919年ごろまで)

さかのぼってみれば、第一次世界大戦前後のドイツ帝国のお名前は非常にシンプルである。

陸軍はDeutsches Heer(ドイツ陸軍)*2

海軍はDeutsche Marine(ドイツ海軍)*3

戦前の日本のように、陸軍と海軍をひとまとめにして呼称するという発想がなかったのだろう。航空戦力であるLuftstreitkräfteはドイツ陸軍の隷下にあったので、軍ですらない。そして、現在でもHeerといえばドイツや各国の陸軍、Marineといえばドイツや各国の海軍のことをさす。Heerが海軍の意味で使われることはない。

 

3.ヴァイマル共和政(1921~1935年)

本当に厄介になるのはここからである。

ヴァイマル共和政の下でのドイツ軍はReichswehr(ライヒスヴェーア)というのであるが、こいつが非常に訳すのが厄介な代物なのである。

まずReich(ライヒ)。

Reichは普通、一人の君主が治める大きな国をさす。歴史的にはいろいろあるらしいが、普通はReichといったらKönigreich(王国)とかKaiserreich(帝国)とかを思い浮かべるのである。そして、至極当然ドイツ帝国の頃の国号はDeutsches Reich(ドイツ帝国)であった。現在でもイギリスは連合王国といわれるときはVereinigtes Königreich(Vereinigte=連合した)とい言われる。大日本帝国もJapanisches Kaiserreichといわれる。*4

ことがややこしくなったのがドイツの第一次大戦敗戦後で、皇帝、カイザーがいなくなって共和政に移行した後も、国号を慣れ親しんでいるとかいう理由で変えなかったのである。

挙句の果てに、学校でおなじみかの有名なヴァイマル共和国憲法第1条にはこう記されている。

 

Artikel 1

Das Deutsche Reich ist eine Republik. Die Staatsgewalt geht vom Volke aus.

第一条

Deutsches Reichは共和国である。国家権力は人民より発する。

 

個人的にめちゃくちゃ好きな条文です。字義どおりに読めば「ドイツ帝国は共和国です」ぐらいの矛盾がありますが、なんだかんだでこのままReichで押し切ったため、国号はDeutsches Reichになったのでありました。共和国とは。ちなみに困惑したアメリカでは、このころの地図ではGerman Empire*5と書かれていたとかいないとか。

 

次にReichswehrのWehr。

ヴァイマル共和政から現代にいたるまで、ドイツ軍は自国の軍に名前を付けるときは”Wehr”という単語を使う。

Wehrは、「防衛」といった意味である。あるのだが、そもそもこれ単体ではあまりつかわれないのである。使うにしても

Abwehr(防諜、防衛*6)、Flugabwehr(防空)、Flugabwehrkanone(対空砲)、*7などなど、基本的にはほかの言葉と一緒に使われる。

さて新生ドイツ軍のお名前はReichswehrになったのですが、これが巷でよく訳される「ヴァイマル共和国軍」と訳すことがいかに危ういかがお分かりいただけたかと思います。多分「ドイツ国防軍」「ドイツ国軍」と素直に訳すのが一番忠実だとは思うんですが、「ドイツ国防軍」は日本ではナチス下のドイツ軍を示す言葉として定着しているので、もう使えないのである。赤城毅さんのロンメルの本でもめちゃくちゃ困っておられた。

まあということで一応意訳でヴァイマル共和国軍と訳されているのである。

 

4.ナチスドイツ(1935~1945)

ナチスドイツの軍はWehrmacht(ヴェーアマハト)

そう思うとDas Dritte Reichを第三帝国と訳すのはいいのかわるいのかみたいになる。英語だと開き直ってThe Third Reichと呼んでるっぽい。多分それが一番正しい。Reichに帝国とか言う意味はもはやこの時代にはないのである。

あんまWehrmachtという言葉が現在ドイツ国防軍以外で使われないのだが、ドイツ語版wikipediaだと19世紀には「軍」「国防軍」ぐらいの意味で自国他国の軍を指して使われていたらしい。

ちなみにMachtは力、権力といった意味である。

で、このWehrmachtが「ドイツ国防軍」と日本において訳されるがために、前述のReichswehrの訳問題が発生するのである。Wehrmachtは「ドイツ防衛軍」ぐらいでいい気がするけど、まあ定着しちゃったものを変える必要もないということでしょう。

 

5.西ドイツ、現在のドイツ

戦後西ドイツで徴兵制が再導入されてまで軍隊が再編された理由は割愛するとして、西ドイツ、現在のドイツ連邦共和国の軍隊はBundeswehr(ブンデスヴェーア)と呼ばれる。

西ドイツ、現在のドイツの正式名称はBundesrepublik Deutschlandと呼ばれる。Bundesは連邦を示す枕言葉のようなもので、Bundesweit(連邦全体→ドイツ全体)といった風に使われる。ブンデスリーガも連邦リーグって意味ですね。

ので、Bundeswehrはドイツ連邦軍と訳されるのである。シンプル、かつ分かりやすい。

 

6.旧東ドイツ

東ドイツは軍の名前を代替的に刷新して

Nationale Volksarmee(ナツィオナーレ・フォルクスアルメー)と呼ばれる。国家人民軍と訳すのが適当だし、実際日本ではその通りに呼ばれる。

陸軍も他のドイツ軍のようなHeerではなく、Landstreitskräfte(ラントシュトライトクレフテ)という名称。日本語に訳せば「地上戦力」「地上軍」あたりになるだろうか。

Volk(人民、民族)とつけてしまうのが非常に社会主義ナチスを感じる。ぼくがドイツでいた街の大きな公園の正式名称がVolksparkというらしいんですが、ドイツ社会民主党かなんかがお金出して作ったかなんかでそう呼ばれているらしいです、まあちょっと今使うには場面を選ぶ言葉ですね。

 

 

といった感じで、ドイツ軍のお名前から見るドイツの歴史でした。Reichの詳細な歴史的な意味はそっちの方面に詳しい後輩がいるのでそっちにまかせます。

*1:wikipediaドイツ語版の自衛隊の記事で、分類を見るとHeer:陸自となっていて面白い

*2:読みは「ドイチェス・ヘーア」

*3:読みは「ドイチェ・マリーネ」

*4:フランスはなぜかFrankreich、オーストリアはÖsterreichと現在でもいわれますが、慣習的なもので当然どちらも今は共和政

*5:Empireは帝国を意味するので当然ドイツ帝国という意味

*6:二次大戦中のドイツの情報機関をあらわすこともある

*7:略がFlaKですね、みんな大好きアハトアハトのそれです

みゅんみゅんミュンヘン、みゅんミュンヒェン

日本のドイツ語界隈ではMünchenを「ミュンヘン」と書くか「ミュンヒェン*1と書くかで戦争が勃発します。後者が一応ドイツ語の発音的には忠実らしいです。*2

 

とりあえず、ドイツ・バイエルン州ミュンヘンに高校同期3人と行ってきたので感想。

 

①物価が高い。

ぼくが留学していたのは東ドイツの地方都市の物価が安いところだったので、ミュンヘンの物価の高さには少し驚きました。スーパーで500mlビール瓶が1ユーロ*3、日本と比べればべらぼうに安いけど出さないと買えないのには少し驚き。東独だと最安40セント*4で買えたのでちょっと悲しかったですね。

REWEやEDEKAといった大手チェーンのスーパーのプライベートブランドの水1.5Lも30セントぐらいと、東独の1.5倍ぐらいだったので、酒に限った話じゃないんでしょうね。

ミュンヘン近郊のアウグスブルクでは飲食店の価格も落ち着いてたので、バイエルンが高い*5というよりミュンヘンがドイツの中で高めなんでしょう。ロンドンとかに比べれば全然安いですが。

 

②街が(破損がないとかそういう意味で)綺麗

東独のライプツィヒとかでSバーン*6に乗っていると、結構車窓からぼろぼろになった廃墟とか見えるんですが、あんまなかったですね、さすが経済が上手くいってるだけある。

 

③客引きとかいないから楽だし治安がよい

さすがヨーロッパ随一*7の治安の良さを誇る都市と国。この前最後に行った国がインドだったので余計治安の良さ、客引きがいないことに感動してしまった。

あとなんかコロナウイルス絡みであからさまにいやな思いをしたことも幸いなく、ちょっと感動しました。*8

 

バイエルンチケット(Bayern-Ticket)が便利

グループで使える、バイエルン内のICE、ICなどの特急列車以外のすべての公共交通機関に使える最大5人用の一日乗り放題のチケットです。RE、RB、M(Meridien)、SバーンUバーン、市バスなどに使えます。

昼間使える二等車用だと、1人だと26ユーロですが、4人だと合計50ユーロ、一人当たり12ユーロで買えます。ぼっちにきびしい。*9

片道で普通に切符を取ると15ユーロぐらいするので、ミュンヘン近郊に行くなら一人用でもお得です。ちなみに、ザルツブルクへもこのチケットで行けます。ノイシュヴァンシュタイン城への道中であるフュッセン駅へも、フュッセン駅から城のある山のふもとの村のホーエンシュヴァンガウまでのバスもこのチケットでいけます。

ミュンヘンに帰ってきても、その日は市内移動にこれを使えばいいのでアド。

 

乗車人数 Bayern-Ticket 2等車 Bayern-Ticket 1等車 Bayern-Ticket Nacht 2等車(夜) Bayern-Ticket Nacht 1等車(夜)
1人 26 ユーロ 38.50 ユーロ 24 ユーロ 35.50 ユーロ
2人 34 ユーロ 59 ユーロ 29 ユーロ 52 ユーロ
3人 42 ユーロ 79.50 ユーロ 34 ユーロ 68.50 ユーロ
4人 50 ユーロ 100 ユーロ 39 ユーロ 85 ユーロ
5人 58 ユーロ 120.50 ユーロ 44 ユーロ 101.50 ユーロ

 

ちなみに、昼間のチケットは平日は朝の9時から翌日の午前3時まで、休日は昼間の12時から使えます。

夜のチケットは18時から次の日の午前6時までです。

 

⑤周りに観光地がたくさんあるので良い

ドイツ、ベルリン以外は一つの街に何日もいて観光するっていう感じでもないので、ミュンヘンミュンヘン周辺の見所の多さはいい意味で驚きました。

ザルツブルクノイシュヴァンシュタイン城などなど。頑張ればスイスのチューリッヒとかリヒテンシュタインも日帰りで行けるみたいです、片道4時間ぐらいかかるけど。

あと日本から行きやすいのもよし。*10

 

 

ということで安全で物価もそこそこできれいなドイツにみんな行きましょう

 

*1:ch は /x/ であり、中舌・後舌母音のあとでは [x] 「ハ」「ホ」、それ以外では [ç] 「ヒ」。(wikipedia,ドイツ語音韻論,https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E8%AA%9E%E9%9F%B3%E9%9F%BB%E8%AB%96)

*2:発音に関してうるさくなるとそもそもüは何なのかみたいな話になる

*3:120円~130円

*4:約50円

*5:ドイツは南の方が経済発展していて、南の方が物価が高いとかかんとか

*6:都市間をつなぐ列車

*7:小国除く

*8:男子4人、割と体格がいいのばかりだったからかもしれないけど

*9:レストランとかも一人で入るとなんだってなるから欧州は割とぼっちにきびしい

*10:なんとベルリンには日本からの直行便がない、首都とは

適切なタイミングにやたら革新的な銃を作るドイツ(プロイセン)

近代における銃の発展の歴史上、やはり二つの双璧をなすのが銃大国アメリカとライバルのソ連とロシアである。だが意外にも、適切なタイミングで革新的で外れがないコンセプトの銃を生み出すのはドイツなのである。

 

そして、アメリカの銃の歴史があまりにも有名なサミュエル・コルト*1とジョン・ブローニング*2に、ロシア、ソビエトのそれがカラシニコフ*3に負っていることを考えると、ドイツの銃の歴史は特定の人物で語るにはあまり人物が前面に出てこない。もちろんヒューゴ・シュマイザーや、ドライゼの名は知られてはいるが、彼らが人物単体で取り上げられることはない。しかし、ドイツはいかなる時も傑作銃を生み出すのである。

 

ドイツ(プロイセン)が歴史上最初に銃の歴史に食い込んだのはやはり1830年代に開発されたドライゼ銃*4であろう。

ドライゼ銃は、世界初のボルトアクションライフル*5銃口から弾丸を装填する前装式ではなく、後ろから装填できる後装式のライフルで、薬莢は紙製である。

そもそもライフルとは、銃身の内側が螺旋状に切り欠いてあって、それに沿って弾丸が発射されることで、弾丸に横回転が加わり、非常に弾道が安定して命中精度がよくなる機構を備えた銃*6のこと。これが施されていないと弾丸はただ火薬でぶっ飛ばしてるだけで、本当に命中精度が悪い。*7

ただライフルは銃身に弾丸を沿わせるために、弾丸の大きさは口径に対して大きめに作ってあるため、前装式だと弾丸の装填に時間と力が必要になる。そのため前装式ライフルはあまり使われなかった。かといって後装式は発射時の火薬のガス漏れで射手がけがをする問題を解決できず、これも長らく使われなかった。それを他国に先駆けて*8解決したライフルを1830年代に開発したのがプロイセンのドライゼ銃だった。この銃は普墺戦争で大活躍した...はず...といわれているのだが、いやというより大活躍したって書いてある文献はたくさんあるのに実はあまり詳細な描写が出てこないが、立って弾丸を装填する必要のある前装式の銃を使うオーストリア兵を伏せて狙いまくって大活躍した(はず)。

 

そして時は飛び第一次世界大戦、浸透戦術*9で歩兵用の1人で携行可能な火力の高い銃*10を開発する必要に迫られたドイツ軍は、世界初の機関短銃(つまりサブマシンガン)MP18*11を開発する。このころのライフル用のライフル弾は威力と射程が大きい*12代わりに、反動がでかすぎて連射に向くものではなかった。そのため、威力も小さいが反動も小さめな拳銃弾を使用する連射可能で携行可能な銃を開発してみたところ、大当たりした。残念ながら銃ごときで戦局は変えられず、ドイツはWWIに敗戦するが、これ以降ドイツやソ連はWWIIでも同じようなコンセプトのサブマシンガン*13を使用して戦争に臨むことになった。日本?当然弾丸を生産するのには生産力が足りなかったよ

 

とはいっても、サブマシンガンには致命的な欠点がある。射程が短いことだ。というわけで、独ソ戦で市街地戦ではサブマシンガンで戦っていた歩兵も、市街地を離れて見通しのきく平原になるとボルトアクションライフルで戦っていたらしい。平原でもないのに生産力が足らずにボルトアクションライフルで戦っていた日本君*14

そこでやたら優秀なドイツは、そもそもボルトアクションが持つ1000m以上の射程能力はあまり実戦では生かされないことに気づく。もっと早く気づけよ。ということで、従来の威力も反動も大きすぎたライフル弾のサイズを小さく*15し、連射しても制御可能な個人用小火器、Stg44を開発する。StgはSturmgewehrの略で、Sturmは突撃、Gewehrはライフルを意味するので、44年式突撃銃という意味になる。こいつも革新的で、大成功してのちのAK-47などに大きな影響を与えるのだが、やはり銃ごときで戦局は変えられず、ドイツは第二次世界大戦で敗戦する。

 

敗戦はしたものの、戦後ドイツのH&K社はG3というライフルが各国の軍向けに大成功したり、特殊部隊といえばサブマシンガンMP5といわれるほどに銃の歴史にドイツは欠かせない役割を果たしている。

 

一つの銃の新たなカテゴリーを何個も作ることは、他の国ではなしえていない偉業だし、いかに銃の発展にドイツの影響が大きかったか、というのは容易に理解できます。まあそして優秀な銃ごときで戦争は勝てなかったね生産力が大事だねというお話でもありました。

*1:リボルバーの発明者

*2:M1911、M2重機関銃などなど、手掛けた銃の傑作度合いとその数の豊富さでは群を抜いている

*3:あまりにも有名なAK47カラシニコフ銃の開発者

*4:日本史でツンナール銃って言われてるやつらしいけど、幕末よく知らないので知ってる人いたら教えてください、ドイツ語のZündnadelgewehr(ツントナーデルゲヴェーア)からきてるはず

*5:戦時中の日本兵が使ってる木製のやつもそれ

*6:ただ現在は戦車の滑空砲とかじゃない限りはどの銃と砲も大抵ライフリングされてある

*7:よく戦国時代とかで言われる相手の白目だかが見えたら撃てというのはこのような命中精度の悪さのせい

*8:1860年代のアメリカの南北戦争でさえミニエー銃という"当時では革新的な"前装式ライフルを使っていたので、めちゃくちゃオーバースペック

*9:簡単に言うと、戦力を闇雲にぶつけるんじゃなく、敵の守りが薄いところから重点的に敵の後方に浸透していって撹乱しましょうねっていう戦術、ブルシーロフ攻勢とかカイザーシュラハトとかでググって

*10:このころの機関銃は数十kgあるのでもって走るとか無理、ロシアがフェドロフM1916とかいうとんでもないオーバースペックな自動小銃開発してるが、歴史の闇に消えた

*11:ドイツのサブマシンガンにはMPってついてるけど、MPはドイツ語でMaschinenPistole(マシーネンピストーレ)、文字通り機関拳銃の略、ちなみにGew98やG36のGewやGはライフルを意味するGewehrの略

*12:当時威力が弱い弱い言われた日本の三八式歩兵銃用の弾丸は、今威力が強いといわれるAK47よりエネルギー、つまり威力が余裕で大きい

*13:ドイツはMP40、ソ連はPPSh-41

*14:日本を擁護すると、ボルトアクションそのものは各国で一応現役で、それが歩兵の主力装備だったことはそれ自体は致命的ではなかった

*15:威力が弱いが扱いやすい日本の三八式歩兵銃はその点時代の最先端だった、50年単位で最先端だったので理解されなかったが

航空券代15万円で10日間で世界一周してみた(行き方編)

はじめに

タイトルの通り、10日間で男二人で世界一周してきました。こんな頭のおかしな旅に付き合ってくれたアルファツイッタラー三田くん(@M1ta_mt)、どうもありがとう。

とりあえずルート組んだ人はたくさんインターネッツにいるんですが、やってみた人はあんまりいないので世界一周のやり方とか書いていこうかなあと

 

ルートは以下の通り

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  出発地 出発時刻 目的地 到着時刻(+1は翌日着) 便名
2月2日 成田 17:00 ソウル(仁川) 19:50   KE2
2月3日 ソウル(仁川) 10:00 ニューヨーク(JFK 10:00   KE81
2月5日 ニューヨーク(JFK 21:00 ロンドン(LHR 9:00+1   VS4028
2月7日 ロンドン(STN) 10:10 イスタンブール(SAW) 16:55   PC1170
2月8日 イスタンブール(SAW) 20:35 ドバイ(DXB) 2:05+1   PC740
2月10日 ドバイ(DXB) 11:45 ムンバイ(BOM) 16:30   AI910
2月11日 ムンバイ(BOM) 23:35 成田 17:05+1 SIN乗継 SQ423,SQ12

うん、あたまが悪い。でもやってみてわかったことは、案外手軽に行ける。航空券で一人15万円位、宿代で一人4万ぐらい(普通のホテル)なので世界一周にしては安いかなあと。*1

とっても楽しかったです、10日間で3回機中泊というハードスケジュールなので帰国した瞬間インフルエンザに苦しみましたが。

 

1.世界一周ルートの探し方

スカイスキャナーで「すべての場所」といった感じに、安い航空券が取れる目的地を手軽に探せるので、それで検索してみる。で、西回りなら西、東周りならとにかく主要航路で東にぶっ飛べそうな安い航空券を探す。*2

これを日本に帰ってくるまで繰り返す。

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特にヨーロッパ・アジアのLCC便が破格の値段で航空券を提供しているので、根気強く調べてみると掘り出し物がザクザク出てくる。なお座席の人権はない*3

太平洋・大西洋横断航路がめちゃくちゃ高い*4ので、世界一周じゃなくて、とにかく行きたい国を稼ぎたい場合は、日本から少しずつ飛行機に乗っていって、ヨーロッパに向かい、そこから折り返して日本に帰ってくるのもありかもしれないです。(実際これがプランBだった)

 

2.宿を探す

ブッキングドットコム(https://www.booking.com/)あたりが便利で安い宿探せるかなと思ってます。価格が安さだけじゃなくアクセスやレビュー、評価をきちんと確認したほうが良さげ。評価が8以上あるほうが好ましいかもです。(7にすら満たないのは正直お勧めできない)日本人のレビューがやっぱりあてになります。日本人のレビューを参考にしよう。ヨーロッパで言えば、まともな宿なら西欧なら1泊2人一部屋1万円、東欧だと5000円ぐらいですかねえ。(北欧は知らない)

あと、キャンセル可能な宿やオプションもあるので、そこも見たほうがいいです。

 

3.ビザを取る

日本人は基本あまり心配いらないんですが、たまにロシアなど必要な国があるので注意。アメリカのESTAやカナダのETAも忘れずに。

 

4.ポケットWi-Fiを借りる

世界周遊SIMでもいいかも。探せばでてくる。あるとないとでは全然違う。

 

5.ついに出発

Where is your final destination?(最終目的地はどこ?)とか無限回聞かれるけどそうしたらとりあえず次の航空券の予約見せておけばいいと思います。

ヨーロッパを動き回るわけでもない限り、たくさん両替しても次の国では使えないので、基本クレカで払って、現金は最低限をキャッシングか日本円を両替する方法がおすすめ。どの国の両替所でも受け取ってもらえる米ドルかユーロを多めにもっておくのもありなのかなあと。まあ日本円を受け取ってもらえないなんてことはそうそうないので、普通に円を持ってればいいと思いますが。*5

 

結論

次はビジネス周遊券買おう*6

体力と旅の英会話に自信のある学生にはいいかもしれないです、意外と簡単にいけます、一緒に付き合ってくれる友達を探すのが一番大変かも、こんな無茶な旅程にまともな感性をしている恋人をつれていったら破局します。

 

*1:ホテルはどうしても一人だと高くつくので、二人で行くか、一人ならユースホステルとかでもいいかもしれません、まあ後者は体力的にはやばいけど

*2:極力自身で乗り継ぎは避けたほうが良いかも、遅延しても救済がないので

*3:ペガサス航空というLCCは座席が倒せなかった、墜落しなかっただけましだけど。ライアンエアーは安いし定時運行には定評があるが、ありとあらゆる意味で人権が失われる。

*4:特に太平洋を横断、アメリカ越えをしようとするとどうやっても7万円前後かかる、大西洋だと探せば2万円前後で横断可

*5:まあレートは悪かったりしますが

*6:100万弱で世界一周できる、老後はこっちのほうがいい

「極左」と「極右」が第一、第二党になったドイツ州議会選

つい数日前、ドイツの旧東ドイツ地域にあるテューリンゲン州の州議会選が行われました。

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結果はこんな感じです。補足すると、SPD社会民主党、CDUはキリスト教民主社会同盟のドイツ語の略で、それぞれドイツの国政では二大政党を伝統的に担ってきました。CDUはメルケルが所属する政党で、二党は大連立を組んで国政で与党になっています。
左翼党はその前身政党がSEDドイツ社会主義統一党)という東ドイツで独裁体制を担っていた政党で、がちがちの左翼。最近だと住宅の家賃に制限をかけるとか言ってました。主に旧東ドイツで勢いがあります。
AfDは移民難民反対、反ユーロを掲げるいわゆる「極右」政党です。これを極右と呼ぶかは実は結構論争のある所ではありますが、ドイツもイギリスのBBCも日本も極右って言ってるので一応極右政党ってことにしておきます。わかりやすいし
緑の党は環境第一政党です。FDP(自由民主党)はリベラルって書いてありますが、日本でいう「リベラル」じゃなくて、ヨーロッパで言うリベラルなので、ネオリベラリズムのリベラルです。新自由主義、大企業、減税万歳みたいな政党です。

 

これが何を意味するか日本に置き換えると、日本共産党が県議会で第一党、右派ポピュリストが第二党、自民党がその次に来る、みたいな感じの衝撃です。そしてついでに立憲民主党が見る影もなくなっているという感じです。

難航しているのが連立交渉。元々は左翼党、SPD緑の党という左翼っぽい政党が集まってこの州では連立を組んで政権与党になっていたようですが、今回の結果ではそれに届かず。定数90で過半数は46、3党合わせても42議席。ここにFDP(5議席)を加えて政権を取るという第一の案があるみたいですが、FDPは嫌がってるみたいです。正直FDP加えて上手くいくわけがない

そもそも前提として、ドイツでは反民主主義的としてみなされてるAfDはどの政党からも連立を拒否されています。本当に骨の髄まで反民主主義的だと党の存在が憲法違反として憲法裁判所に解散させられるので控えめですが。(ドイツ共産党とかは実際に解散させられてます)

そして二つ目の案がCDUと左翼党の連立。どう考えてもうまくいくわけねえだろ。ただCDUで大いにもめているらしく、国政レベルでは党幹部がゴーサイン出しているものの、テューリンゲン州のCDUや国政レベルでもかなり反対が大きく、無理と突っぱねているとか。

三つ目の案がCDUとAfD(とあと多分FDP)の連立。ぶっちゃけネット上でもさんざんファシストとなじられているAfDとの連立は禁じ手であり、論外とされてきました。ただ、CDUでは左翼党と組むかAfDと組むかでものすごくもめているみたいです。左翼党と組むよりかは運営自体はうまくいきそうな気がしないでもないが、リスクがあるので所詮州議会選ではこれはないんじゃないかなあとみています(極左ファシストとか言う地獄のような選択肢、どっかで聞いたことあるな

四つ目の案が左翼党、SPD緑の党少数与党にとどまるという説。ぶっちゃけかなりありそうなのでこまる。

 

という感じです。この連立の組み方でドイツの政党の方針転換などがわかるので、個人的にはかなり注目しています。

 

ちなみに、テューリンゲン州のAfDトップを務めるBjörn Höckeは、「移民に厳格で」「WWIIなどの負の歴史に対して自虐的ではなく」「文化的に一体性を保っている」工業国である日本を高く評価していて日本の道を見習えっていってるんですよね。まあそうすると日本がAfDを極右っていうと日本はどうなるんだということになるという()しかも彼、喋り方がめっちゃナチっぽいので余計ファシストいわれてますね

↓その動画(59:30ぐらいから日本について言及)

 

 

 

幼女戦記ED「Los!Los!Los!」ファンカバーで学ぶドイツ語1

 

 

突然だけど、幼女戦記にはまった。元々軍靴のバルツァーとか、ナポレオン獅子の時代とかそういうハードなミリタリー系が好きなので、こういうWWIとWWIIを掛け合わせたのマジで好物なんですよね(語彙力の欠如)

 

さて、色々と調べていたら幼女戦記ED「Los!Los!Los!」のドイツ語ファンカバーが出てきて、翻訳も歌い手のクオリティが高かったのと、面白い表現を見つけたので取り上げていこうと思います。

 

[http://]

 

 

 

http://forgetmenots.doorblog.jp/archives/50512081.html

↑先人がにたような解説しててリスペクト、さらに内容を盛っていきたいです。

 

ドイツ語の発音からわからん人は下にかいつまんで書いたドイツ語のアルファベットの発音があるので良かったら参考にしてください。

 

では行きましょう。

ドイツ語では形容詞(副詞)や名詞一語、一言で命令を表すことが一般的です。命令形もあるのですが。

まず「Los!Los!Los!」の曲の冒頭で使われている単語がその典型です。

Feuer:【名】「火、射撃」ここだと、「撃て!」ぐらいの意味ですかね。

Sperrfeuer:【名】「弾幕射撃」sperren(阻止する)とFeuerの複合語。

los:【副】「行け!」「出発する」単体で使うと英語のLet's go ぐらいの意味でよく使われる。軍事的な文脈だと「前進!」や「突撃!」の意味で使うこともある。当然この曲ではこちら。

Achtung:【名】「気を付けること」よくドイツの看板でみるやつですね。「注意!」「Caution!」みたいな感じでよく警告の意味で使われます。

hinlegen:【分離動詞】「伏せる」分離動詞とは何ぞやってことになりますが、とりあえずここでは置いておいてください。hinlegenは不定詞であり、本来命令系はLege hin!/Legen Sie hin!/Legt hin!になります(なんで3通りあるのかは後程)が、ぶっちゃけ不定詞でも命令の意を表します。

Deckung:【名詞】「隠れること」「援護」。英語の軍事的な意味での「Cover!」あたりが近いかもしれない。

Halt:【動詞haltenの二人称親称の命令形】「とまれ!」これもめっちゃ使います。移動をやめさせたいときに使うかんじです。

 

言い忘れてましたが、ドイツ語の名詞の最初の一文字目は文のどこにあっても大文字です。

最初の

"Feuer, Sperrfeuer, los!"は「射撃、弾幕、突撃!」

"Achtung, Deckung, hinlegen, Halt!"は「警戒、隠れろ、伏せろ、止まれ!」みたいな意味になります。

Hearts of Iron IVのドイツプレイでの音声でも、"Los!"、"Deckung!"、"Halt!"は普通に使われているので間違いないかなあと思います。

ちなみにドイツ語のファンカバーだとFeuer, Sperrfeuer,Feuer, los!になってますが、多分元の日本語の曲がSperrをシュペルっていう風に二音節で発音しているため、sperrを一音節で発音してしまうと余るので入れたんでしょう。

 

今回はここまで。発音に力入れすぎた

 

ドイツ語の発音

ドイツ語の発音について前置きしておくと、大体日本語のローマ字読みと一致している。ただしいくつか例外もあるので、最低限書いておきます。

ウムラウト

ä→「エー」日本語の「え」とほぼ同じ。Käse(ケーゼ)
ü→「ュ」日本語だと表現しにくい。口を突き出して「ウー」っていう口のまま「イー」と発音すると出る。ちなみにyもこの音。Küss(キュス)、System(ジュステーム)
ö→「エ、オェ」これも日本語にはない音で、「オー」の口をしながら「エー」っていうと出る、日本語だと「エ」のカタカナに転写されてしまう。例えばKöln(ケルン)、Danke Schön(ダンケ シェーン)。しかし、ケルンは「コェルン」のほうが近いし、Schönはシュンのように聞こえるかもしれないがんばれ


二重母音

ei→「アイ」某氏の曲名、アイネクライネ(Eine Kleine)のアイとライに出てくる音である。例)Heimat(ハイマート)

au→「アオ」。Auto(アオト)

eu、äu→「オイ」なんでこのスペルでこの音になるか正直理解に苦しむお船が好きな界隈が良く言ってる、Prinz Eugen(プリンツ・オイゲン)のスペルで使われてますね

ie→「イー」 liegen(リーゲン)

子音

j→ヤ行。ぶっちゃけ日本語のヤ行とは違うらしいけど気にしない。Japan(ヤーパン、日本のこと)

r→「のどをこする様なr」「巻き舌のr」どちらでも良い。前者の発音は「水なしでうがいするような音」ってドイツの語学学校で言われた。前者は聞きなれない人には「ハ行」に聞こえる。ヘルシング少佐演説ドイツ語版でMeine Kamaraden(諸君)が「マイネ カマハー」の空耳コメントがついているのはそのせい。巻き舌のrは南部とかロシア人によく使われているけど、標準の発音として認められているので問題ない。

rauben(ラオベン)

語尾でerと来ると「アー」の音になる例外的な挙動をする。Ausländer(アオスレンダー)

単体であとに母音が続かないと、ほぼ「ア」の音になる。Kern(ケアン)

ちなみに日本語だと母音が続かないrも「ル」の音に転写されることがあるが、あんまり現代ドイツ語だと一般的じゃない。ベルリン(Berlin)は現代ドイツ語だと「ベアリーン」である。

s→母音が続くと濁って「ザ行」になる。sanft(ザンフト)とか。単体なら普通のsである。los(ロース)

ss、ß→「ス」の音。ssは短母音の後、ßは長母音の後に来る。dass(ダス)、gießen(ギーセン)

v→原則fの音。von(フォン)など。外来語だとvの音になることもある。Dativ(ダーティヴ)。

w→vの音。Volkswagen(フォルクスヴァーゲン)。

z→「ツァ」行の音になる。Zeit(ツァイト)、ganz(ガンツ

q→「クー」そのままだが、英語と同じく原則後にuが続く。なおqの後にかならずwの音が添加されるので、kwの音になる。quartier(クヴァーティーア)

ch→a,o,uの後のchは息切れしたとき「ハ、ハ」と出るような音。前の母音が後のchにも持ち込まれる。nach(ナハ)、Loch(ロホ)
それ以外+chは日本語の「ヒ」に似ている。ich(イヒ)Pech(ペヒ)

語尾のig→gがchの音になる。zwanzig(ツヴァンツィヒ)

sch→英語のshの音。単体だと「シュ」schießen(シーセン)、Geräusch(ゲロイシュ)

語頭のst、sp→sがschの音になる。Student(シュトュデント)、sprechen(シュプレッヒェン)

tsch→「チュ」の音。deutsch(ドイチュ)

chs→ksの音。Fuchs(フクス)

語末のb,d,g→それぞれp,t,kの音になる。ab(アプ)など。

 

あとフランス語っぽい単語はフランス語っぽく読みます。

割と簡単だと思ったけど、だいぶ覚えること多いなって思いました、がんばってください(丸投げ)

 

 

「財政規律」「小さい格差」「低い失業率」が両立しえない話

よく「財政規律(低い税負担)」「小さい格差」「低い失業率」の三つが同時に両立しえないとして、「サービス経済のトリレンマ」のことについて触れていたけれど、実はG.エスピン=アンデルセンの福祉レジーム以外できちんとした文献を発見できていなかった。しかし最近探していたら、大本であるT. Iversenの論文を英語ではあるが発見したのでざっと読みではあるがまとめてみる。

https://sites.fas.harvard.edu/~iversen/PDFfiles/Iversen&Wren1998.pdf

 

結論から言うと、彼の主張は、工業化が終わり、サービス経済に移行した(先進)国では、「財政規律(低い税負担)」「小さい格差」「低い失業率」が原理的に三つ両立できず、必ずどれか一つを犠牲にして、同時に二つしか実現できないというものである。かなり元も子もない

経済的なロジックを交えていて、それなりに説得力はある。ただ、省庁の資料で引用されてたりする割に、あまりグーグルでも出てこないので、通説ではないのかもしれない。そこらへんの立ち位置が僕自身分かってないので、まあ参考程度に読んでくれれば幸いです。(でもこの前博士課程の人とこの話をしたら結構褒められたので、一応まともな主張なのだろうと思ってる)

 

ということでざっとまとめると

 

Iversenは、グローバル化が上述したような格差を発生させている一因かもしれないが、最も低い賃金を生み出す仕事であるサービス業にも注目しなければならないとする。

まず前提としてサービス経済に至る前の工業が発展している国では:

1.人々の増加していく所得が、収入に占める生きていくのに必要な消費財(食べ物とか)の支出の割合が減り、生活上必ずしも必要ない耐久消費財への支出の割合が増える(エンゲルの法則)

2.人々が物質材へ感じる必要性が高いため、物質材は価格弾力性がある。つまり、価格を下げれば需要がその分増える。賃金の上昇が生産性をすべて吸収してしまわない(食ってしまわない)なら、(生産性向上の)結果として生じた生産物の相対価格の下落は、工業セクターでの雇用市場の拡大につながる。急速な生産性向上は、賃金を上昇させ、そして市場を拡大し、さらなる雇用を生み出す。*1

ただだんだん発展してくると、マーケットの飽和と消費者が量より質を重視することによって、上述したようなサイクルが止まってしまう。このような状況下に陥ると、生産性向上が雇用減少にすら陥る。

それは経済がサービス業に移行することを伴うが、サービス経済では生産性向上が遅いか、質の低下を伴ったものである。(先生がより多くの生徒を一気に見ようとすれば、あるいは看護師がより多くの患者を一気に見ようとすれば、それは質が低下しているだろう、という例が出ている)サービス業への需要はあるが、このような状況下ではサービス業の価格の低下と賃金の上昇を両立するのが難しい。しかし、もし仮に工業セクターの生産性が変わらないペースで上昇するなら、サービス業の賃金、つまり人件費も結局吊り上げられ、サービス業に占める人件費の割合が増大(ボーモルのコスト病)する。

ということで結果として何が起こるかというと、

(1)サービス業における賃金を引き下げることで、低価格、需要、雇用を守ることを許容する可能性。
(2)それを防ぐため、政府が公共セクターを創出し、比較的高い賃金で雇い、失業率や格差を吸収する可能性。なお税負担の上昇と財政赤字を招く。

このことから、最初に述べた「財政規律(低い税負担)」「小さい格差」「低い失業率」の三つが両立できない、「サービス経済のトリレンマ」が導かれる。

「財政規律」「小さい格差」を求め、「低い失業率」を犠牲にしたのがキリスト教社会民主主義、例えばドイツ。

「小さい格差」「低い失業率」を求め、財政規律を犠牲にしたのが社会民主主義、つまり北欧のスウェーデンなど。

「財政規律」「低い失業率」を求め、「小さい格差」を犠牲にしたのが明示はされていないが新自由主義アメリカ。

 

以上がIversenが最初の10ページぐらいで言ってた内容のまとめです。ロジックとソースが知りたかったのでこんなもんでいいのかなと。というか想像以上に難解で飽きた
1998年に書かれた論文で、よくもまあこんな内容を1998年にかいていたなあと感心するばかりです。

個人的には、日本は3つ目になっていきつつあるのかなあとは思ってます。財政規律が破綻してる?知らんなそんなものは

 

あんまこれについて詳しく書かれた日本語の文献がないので、これがサービス経済のトリレンマへの理解の助けになれば幸いです。

*1:まあつまり、工業が現在進行形で発展してる国(日本だと高度成長期か)だと、生産性が向上させやすく、それに伴って雇用と賃金と市場が上昇しますよという話です。(論文の中では"Golden Age"とか書かれてる)